なぜわざわざSTOLL社の編機を使っているのか
その理由はただ1つ、STOLL社製の編み地は
「目面が美しい」からです。
「目面」という言葉にピンとこない方も多いと思いますが、主に表面の編地の見え方を言います。KNITOLOGYのワークシリーズの特徴は何と言っても、張りがあって目の揃った編地です。
もちろんこの質感を出すために素材の工夫も行なっていますが、何と言ってもハイゲージで揃った美しい目面を作るのに一役買っているのでSTOLL社の編機です。
大学院の研究の中で、福祉の現場や養護施設に関しての文献を読んでいると、そこでは皮膚感覚がとても重要な役割であるにも関わらず、布製品に関しての研究はまだまだ開拓されていない事実を知りました。
ファッションの分野でのデザインは多種多様すぎており、もっと広く様々な人へ役に立てるような提案はできないのだろうか、、、ファッションの文脈と違うところで、私の積み重ねて着た知識や経験を活かせないものか、、、と日々頭の中で思いを巡らせていました。
布の肌触りに注目し、’布とヒト’という大きい枠組みで研究をしたら、養護施設や病院、様々な疾患を抱えている人など広く役に立つことができるかもしれない!と思い、布の触り心地が人へ与える影響を人間工学と感性工学を用いて探る研究をすることにしました。
人間工学では、人の無意識の行動や意識の変化を数値化していき、そこに共通性や傾向が存在するのかを探っていきました。研究を進めれば進めるほど、本当に面白い現象であったり、過去の様々な文献を知ることができました。
触り心地、それは皮膚感覚という人間の原始的感覚の一つから得られる現象であり、視覚や聴覚と違い日常で遮断することのできない唯一の感覚です。
日常的に駆使している感覚であるにも関わらず、まだ解明できていなこともく、しかしなくては日常生活を送ることのできない重要な存在です。
皮膚感覚を調査する中で、統合失調症や自閉症を患っている人にとって皮膚感覚への刺激が重要な役割があることも知りました。
ならば、人にとってとても身近である布をデザインすることは
多くの人の生活の中に落とし込むことができる素材だと考えました。
布を用いた治療法ができないのか、
布を用いたセラピー方法を確立できないか、
今から医師になることは不可能だけど、私にしかできないことがあるのかもしれない。そんな想いで研究しました。この研究はKNITOLOGYを立ち上げた今でも続いています。
KNITOLOGYの活動の中で、スピードは遅いかもしれませんが少しづつ研究を進めていき、ここで報告していきたいと思っております。
]]>なぜわざわざSTOLL社の編機を使っているのか
その理由はただ1つ、STOLL社製の編み地は
「目面が美しい」からです。
「目面」という言葉にピンとこない方も多いと思いますが、主に表面の編地の見え方を言います。KNITOLOGYのワークシリーズの特徴は何と言っても、張りがあって目の揃った編地です。
もちろんこの質感を出すために素材の工夫も行なっていますが、何と言ってもハイゲージで揃った美しい目面を作るのに一役買っているのでSTOLL社の編機です。
STOLL社の目面が美しいと言われる理由には、より目の詰まった編み地を仕上げることができる、鉄がしっかりしていて目減りがしにくい等の理由が挙げられます。針と針との隙間が狭く、目の詰めてぎゅっと編むための微調整が効くというのがSTOLL社編機の特徴です。KNITOLOGYのワークラインは12GGの編機を使って作っていますが、目を詰めて編んでいるため、仕上がりは14〜16GG相当の編み地に見えるほどです。
また、現在は少し製法が異なっているかもしれないですが、以前STOLL社では機械に使う強い鉄を作るために、2年間屋外に放置して鉄を硬くしていたそうです。
このようにSTOLL社の機械の特徴はKNITOLOGYの製品開発に必要不可欠な要素を持っており、編み地の表情としては一見シンプルであまり特徴がないように思われるこの目面を出すために素材開発段階でたくさんの工夫をしているのです。
目をぎっしり詰めて作ったKNITOLOGY製品はニットとしては非常にだれにくく、しっかりとした張り感を維持できるということは製品をお持ちのお客様はご存知だと思います。
引き続き、ブログではKNITOLOGY製品についての色々な話をしていきたいと思っております!
どうぞご期待ください!
記事:2017年12月1日
KNITOLOGYはアパレルブランドとしては珍しく自社アトリエに工場と同じ型の編機を所有し、デザイナー自らCADというニットのプログラムを操り、日々新製品の開発をしています。
日本のアパレルの現場では、生産地とデザイン現場が離れていることが一般的で、デザイナーが自らプログラムを組んだり、機械操作を行うことはほとんどありませんが、KNITOLOGYでは素材やニット技術の模索に多くの時間をかけたからこそ作れるニット製品(これに関してはまたの機会にお話ししますのでお楽しみに!!)の開発をするため、編機での試作が非常に重要なのです。
編機導入以前は素材開発やサンプル製作の度にデザイナー自身が工場に足を運んでいましたが、工業用編機をアトリエに導入することによって、デザインと素材開発、そしてサンプル製作までを全てアトリエで行い、ブランドコンセプトの『実験的に模索し、ニットを学問のように研究していく』ことを実現しています。
そしてそんな今後のKNITOLOGYの命運を担っていると言っても過言ではない編機はドイツのSTOLL社のもので、はるばる海を渡ってドイツからやってきました。
その大きさはなんと横幅2.7メートル、重さは1トン!!
アトリエへの搬入もクレーン車を使っての一大イベントでした。
搬入した日はあいにくの雨でした、、
搬入は専門の業者さんがやってくださるのですが、段差をものともせずに、迅速に設置をしていただきました。
今となってはすっかりアトリエの主です!
それにしても日本では横編機のシェア60%以上と言われている島精機がありますが、KNITOLOGY製品の機械はドイツのSTOLL社の製品を使っているのかと疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか?
その理由は「02. 自社の編機について〜なぜSTOLL社なのか〜」のブログで紹介いたします。
記事:2016年9月10日
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ブランドの立ち上げ構想2011年から2020年の今年で9年。
これまで多くの方に支えられ、
ゆっくりながら着実に成長を続けているKNITOLOGYは
というビジョンを掲げ新たな一歩を踏み出します!
さて、ここではKNITOLOGYが掲げる、3つの「ここちよさ」について簡単にお話します。
1、ユーザーへのここちよさ
KNITOLOGYの製品開発にはファッションアイテムとしてデザイン性のみを優先せず、様々な人にストレスなく着ていただく着心地や、機能性が絶対に欠かせないデザイン要素です。それは、着る人にとって「ここちよい」服であって欲しいというブランドの思いから。
これからも素材や動きやすさの研究を続け、毎日着たくなるニット製品を学問のように探求していきます。
2、作り手のここちよさ
ブランドの創設にはデザイナー鬼久保が、地場産業をリサーチする中で見つけた問題点から、その問題を解決できるようなものづくりをできないかと考えた背景がありました。どのような問題点に直面し、製品を作ることになったかのきっかけになったのは、福島にある阿部ニットという工場との出会いからです。生産には、作り手の存在が不可欠です。KNITOLOGYは作り手とともにブランドとして歩んでいきます。
3、社会に還元されるここちよさ
これは今後KNITOLOGYが、挑戦していきたいここちよさです。
デザイナーの鬼久保は在学時から、福祉デザインに興味があり、今メインで作っているラインをベースに、入院着や福祉関係の服作りがしたいという思いがあります。
ニット生地は伸縮性があり、身体に馴染みやすいため、医療、福祉の現場に大いに応用が効く素材です。
入院着はこれから福祉の需要が増えるということと、人によって症状や怪我の重度によって細かいオーダーが必要だと考えるので、ニット生地の特性と、自社アトリエに編み機を持っているというKNITOLOGYの強みを生かし、あらゆるニーズに答える製品を今後開発していきたいと考えております。
「人の役に立ちたい。」
それがこのブランドの原点です。
ニットを学問のように追求し、あなたの”生きる”に寄り添いたい。
わたしたちは “ひとりひとり” に ”ひとつひとつ” ニットを届けます。
本年もKNITOLOGYをどうぞよろしくお願い致します。
記事:2019年1月
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今回はアトリエにある編機のメンテナンスや掃除の様子についてお話ししたいと思います。
前回STOLL製の編機は「目面が綺麗」というお話をしましたが、この綺麗な目面を出すために、KNITOLOGYのワークラインの編み地は編み目をきつく詰めて、ガチガチにして編んでいます。このガチガチにした編み地はとにかく機械トラブルが多い、、
「ガチガチにして編む」ことを手編みに例えると、手編みできつめに編む時、ゆるく編むよりも目が拾いにくかったり、手が痛くなったりします。
ごく簡単に言えば、それと似たような現象として、機械でも編み目を詰めてきつめに編むと、針が折れやすい等のトラブルがとても多いのです。
針が折れると編地に傷が出てしまうので、その編地は例えサンプルでも製品に使うことはできません。
掃除はまず、針と針の間に詰まったホコリ等の汚れを掻き出すことから始まります。
この作業だけで結構時間がかかります。
針を抜き出して、小さい鎌のような道具で、針についた汚れを掻き出します。
そして針全体の汚れを拭き取ります。汚れを拭く生地は、試作の廃材を使っています。
白い生地で拭くと汚れで真っ黒になっているのが、わかると思います。
掃除の終わった針を出すとこんな感じです。
なんと編み機の両面で針の数は2396本!!ちなみにこの写真の量で機械全体の4分の1なのです。
そしてこの針は一本258円と地味に高いです、、これをまた一本一本編機に戻していきます。
製品を機械で編んでいるというだけで、スイッチをポチッと押すだけの全自動という印象がある方もいらっしゃるかもしれませんが、 針トラブルの時に限らず、編機は常に掃除やメンテナンスが必須です。
日々のメンテナンスを怠ると生き物のように調子が悪くなり、製品の仕上がりにも影響がでるのでKNITOLOGYにとって非常に重要な仕事なのです。
記事:2017年5月1日
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こんにちは、デザイナーの鬼久保です。ある日、仕事帰りにふと携帯を見ていると一つのニュースが目に飛び込んできました。
それは、私がとても尊敬する女性 緒方貞子さん の訃報でした。
2019年10月。本当に悲しく、緒方さんの事で頭がいっぱいになりました。緒方さんは日本人初の国連難民高等弁務官として、世界の紛争地へ行き難民支援に取り組まれてきました。常に最も弱い立場の人たちの利益を考え、様々な難題に真っ向から取り組んできた方です。彼女を深く知ったのは、緒方さんの意思を継いぎ、今の国連を引張ている中満泉さんがきっかけでした。
中満泉さんは日本人女性初の国連事務次長として軍縮を担当している素晴らしい方です。彼女の出した書籍「危機の現場に立つ」を読んだ時は、あまりの凄さに
自分の力のなさを痛感し絶望したことを今も鮮明に覚えています。
そんな彼女も緒方さんから多大なる影響を受けた一人です。
緒方さんも中満さんも見た目は小柄でとても優しそうな外見なのに、
ライフルを抱えた自分の体の2倍はあろう男性と立ち向かい、怖気付かず、対等に、かつ円滑に交渉を進めている姿は
言葉では表せない衝撃を覚えました。各国に緒方さんの意思を引き継ぎ、今なを世界の厳しい現場で戦っている人たちが沢山います。常に弱者に寄り添い、声を聞き、最善の選択は何かを現場で探りながら 生と死 に向き合っている。私は自分が緒方さんや中満さんと同じ日本人女性であるということだけで、誇らしく思います。
緒方さんの言葉で印象に残っているものがあります。
どんなに頑張っても彼女たちの足元にも及ばないことはわかっています。
それでも、その意思を受け継ぎ、自分のできることで自分の目の前の人の’生きる’と向き合いたいと強く思っています。それはいずれ日本だけでなく、この志しに共感してくれる人が広がり世界とともに歩めることを信じています。
記事:2019年11月1日
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